MAD-Cobra 2013 by エスク

※MAD-Cobraを紹介させて頂くためエスク中野さんより許可を頂いて原文のまま転載。

< Madのコンセプト >

MadC-240-12
日本に専門のスポーツカイトメーカーが存在しない中、Madはエスクが独自に開発した、トリック志向の強いスポーツカイトです。Madが誕生してから、2013年で10年目を迎えました。Madはバージョンアップの度に性能を向上させ、常に世界のトップクラスの性能を発揮してきました。その記念すべき年である2013年、超高性能なスペシャル・バージョンである「Mad-Cobra」を限定版として販売しています。

MadC-240-18エスクはMadの開発を継続することで、多くのテスト・データを得ると同時に新しいアイディアや特異なノウハウを得ることが出来ました。自動車メーカーが、販売を目的としないF-1に挑戦するのと同様、新しい技術は強い探究心から生まれます。自ら作らなくて、本当のことは解りません。従来の理論と異なるテスト・データが出ることもあり、何度もパラダイム・クライシスを経験しながら、新しい発見に興奮したものです。我々は新しいことや困難なことにチャレンジすることが何よりも好きなのです。エスクにはカイトを仕入れて売るだけでは満足できない強烈なインタレストがあります。Madがエスクで取り扱っている世界の名だたる有名機の高い性能に劣らないことを当然とするだけでなく、スポーツカイトの持つ、糸を通して手に伝わる程よい曳きの感触や、自在に動かせるコントロールの醍醐味、そして、トリックを克服する達成感まで、言わば「リニアな飛び味」にフォーカスし、そして、徹底的に機能を追及した、日本製でこその精緻さを持っています。

Sally Hogshead著のある本によると、いま、人はインフォメーション・エイジからファシネイション・エイジに移行しているそうです。人は魅了されるよりも魅了したい願望の方が強いのです。スポーツカイトのようなパフォーマンス性を持つことを趣味にしている人は、自分の腕を磨いて人を魅了したいと思っているかも知れません。いいカイトが欲しいと思う人は魅了できるカイトを求めているに違いないと思います。

MadC-240-14実はMadはエキスパートを対象にしています。エキスパートでしかコントロール出来ない難しさがある、という意味ではありません。Madは殆どのトリックを従来のカイトでは困難と思うものでさえ、ある意味でイージーに行えます。「エキスパート向き」、の意味は、エキスパートほど、なぜそうしているか、が理解でき、エキスパートでない方にはその目的がよく判らない部分もあるからです。Madにはエキスパート・レベルの高度なトリックにプラスになる機能も多く設定されています。

MadC-240-13例えば、ヨーヨーは最初からマルチのヨーヨーを基本に設計しています。マルチ・ヨーヨーは、オートマティカルを可能とするよりも、マニュアルなスキルによるコントロールによってこそ面白いものです。よって、、ヨーヨーリングのような補助的なものを使用せず、スキルによって行うことを前提にしています。重い錘によってカイトが勝手にヨーヨーしてしまうと、フライヤーが微妙なコントロールによって操作したくても、それが殺されます。つまり、フライヤーの力の入れ加減によって、マルチするようにしており、その力加減と連動して、速くも遅くも動くカイトに面白さを求めています。カイトが勢い良く、ある意味、勝手にヨーヨーしてくれるカイトを期待していると、幾分、入りが弱いと感じる筈です。しかし、弱すぎる筈はありません。カイトをヨーヨーさせて、次に繋ぐ際の判りやすい回転速度の変化はどのくらいかいいか、を求めた重心軸を設定しました。

MadC-240-08カイトの構造からラインが引っ掛かりやすい部分は徹底的に対策した作りになっています。コンビネーションでトリックを行うと、空中に浮いたスラックラインが沈下する遅さと、高速で回転するカイトの速さがクロスしやすいため、ホンの小さな突起物や隙間であってもラインが引掛かりやすくなります。これは、スキルが低いために翼端にラインを引っ掛けてしまう人のことではありません。ここがこうなっていたらなあ。を、そうしています。そうでなければハッピーではありませんから。
MadC-240-10競技用のスポーツカイトは機能優先による性能を競っているため、風速による仕様の使い分けが前提で、また重要とされています。Madは競技を無視している訳では有りませんが、飛び味の堪能度を非常に重視する観点から、風速にジャストミートした飛び味を出せる工夫をしています。つまり、2機使用せず、1機だけで、変化する風速にも、出来るだけ長くジャストミートした状態でトリックを堪能したいのです。そういうカイトこそ誰もがmust have と思うでしょう?
Madは2種のボトムスプレッダーを使い分けして、1機で弱風から強風まで対応できます。作業としては単純に2種を変更するだけですが、そのために、ボトムスプレッダー以外のフレームの硬さ、柔らかさ、重さ、について、最もベストな組み合わせを究明し選択しています。だから、ボトムスプレッダーが変わってもフレームの柔軟性は保てます。ただ換えるだけの単純な発想ではなく、繋がるフレームの先の先の影響も考慮してあります。また、外径の異なるロッドを同径サイズのコネクターでコンパチブルして共用する工夫をしています。よって、AS-LightとAS-Goldのように互いに外径の異なるロッドでも、同時に使えます。

基本的に、ジャストミートした風速においては非常に高い性能を容易に発揮するように設計されているのでMadの指示通りにすれば、最高の性能を自分のものにできるでしょう。最良の飛びの「質」を求めたい、贅沢な悩みを持つ、フライヤーを対象にしていますので、風も無いのに飛ばそうとしたり、爆風で翻弄されても飛ばしたがるフライヤーを対象としていません。また、大幅な改造や調整はむしろ性能ダウンにしかなりません。やらないようにしてください。手直しは必要ありません。既に完成しています。糸目調整だけで間に合うと思います。


< Madの性能の源 >

MadC-240-01●Madのセイルはもともとノーズの下はピンと張らず、左右にタックをとって風溜まりとしています。今回、それとは別に機首の気流の境界層を制御するため、Madだけの新機構として考えた境界層板を付けました。「コアンダ効果」を期待した装置です。ノーズ直下に空気を呼び込み、ノーズ周辺のコントロール性を向上させたいためです。(注:ルーマニアのアンリ・コアンダが発見した境界層制御に関する理論)

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●フレームに選択したカーボン・ロッドはロッドの反発力や強度だけでなく、その部位毎に最適な重量のロッドを配置しました。軽い方がいい部位と少し重い方がいい部位があります。また、堅い方がいい部位と、少し柔らかい方がいい部位があります。すべて軽ければいい。すべて強ければいい。そういうものではありません。フレーム全体の重量のバランスを考慮したチョイスで組み立てられています。これらはロッドの工学的な機能のみを重視したため、コストは考慮していません。だから非常に高価なロッドも含まれます。(必ずしも高価なロッドがいい結果を出すとは限りませんが、ASはマッチし、いい結果に繋がりました。)

MadC-240-02●ヨーヨー・ストッパーはマルチ・ヨーヨーを考慮した最良の形のものを採用しました。Kitehouse製のヨーヨー・ストッパーをベースに、エスクで改造し、重量も軽減しました。この形は側面から引っ掛かることがなく、ヨーヨーするサイドからのみ機能するもので、この改変によって高さも不足しません。これはエスクの手作りなので、壊れたときのリペア以外、単品の販売は行いません。更に、マルチの掛け損ねをカバーする「リカバリー」を考案して装着しました。

●ヨーヨーストッパーの取り付け位置は巻きが確実で、巻いたままで飛行でき、そして巻き戻しに支障のない位置を実際にテストして決めています。

●マルチ・ヨーヨーは3回無事に巻いても4回目に外すとすべてご破算になるリスクがあります。そのため、リカバリーを装備しました。ゆるゆるの巻きには助けになりませんが、正しい締まった巻きのハズレには役立ちます。

●ヨーヨーの入りは力の入れ加減で入れられるよう、いくらか弱めにしています。マルチ・ヨーヨーでは、カイトが勝手にヨーヨーに入ってしまうような入り方をされると、微妙なコントロールはやり難いため、自分の意思で入れるようにしています。バラストを増やしたりしてヨーヨーの入りを改善?しようとしないでください。コメットなど、他のトリックに悪影響があります。これで自在に入りますから、スキルアップで対処されますようにお願いします。

●常にベストな風の状態でトリックはしたいもの。しかし、一般のStd仕様は風速2mから8mまでとしても、何と6mもの広い範囲をカバーしているのです。実際問題、風速4mでベストな飛びをするカイトが、風速7mで同じようにベストな飛びをする訳はありません。おいしいところはホンの少しで、その他は我慢の風速です。Madはいつも美味しい風で飛ばしたいという願望を少しでも満足させたいと考えます。贅沢な悩みはいくらあってもいいですから。どんな問題も考え倒せば do able だと楽観的に考えて。

MadC-240-03●MadはStd仕様ですが、スプレッダーを変更することで、いつもベストな風速にしたいと考えました。スプレッダーを変えて、高い風速から低い風速までカバーする場合、スプレッダー以外のフレームの対応力が重要となり、スプレッダーよりもスプレッダー以外の変えられない部分の構成要素のチョイスをどうするかが最重要となります。また、Madでは装備した「スタビライザー」を機能させることで、弱風用のスプレッダーの限界点を自動的に上昇させ、強弱の中間を埋めています。スタビライザーの糸目位置は可変です。

●設計段階から、セイルやパーツも含めたひとつひとつのフレームの重量をシビアに積算し、精度の高い縫製によって、空中でのバランスを向上させました。フェードは非常に安定しているため、フェードからのどのようなトリックも安定して行えます。トリックカイトとしてのフェード機能を重要視しています。

●極端な話、フェード系やヨーヨー系を重視したカイトはコメットが弱くなり、コメットが強いとヨーヨーが弱くなる傾向があります。それは重量バランスが異なっており、ある面で相反する点もあります。これらの問題を解決しないと、どちらかはそのカイトの弱点になります。Madではどちらも得意です。

●セイルの設計時点でラインが引っ掛かりやすい部分を可能な限り無くすようにしました。また、テスト飛行ではそれをすべて確認するようにしました。ウィスカーの背後の止め具の形によってはここにラインが引っ掛かります。僅かな隙間でもラインが入る場合があります。それらを防止するため、カバーを付けると、カバーが磨耗したときにそれ自身が引っ掛かりの原因を作ります。ブライドルのコブが多過ぎても絡みます。翼端からロッドが突き出ていると、ノックの位置でラインが巻きついたらとれません。コネクター類はすべて埋没する形式に作りました。引っ掛かりには神経質に対策しています。

MadC-240-15●トレーリングエッジの補強についてはレインフォースドマイラーでガッチリと補強縫いされ、同時にセイルの伸び対策もしています。ウィスカーの台座も頑丈です。トレーリングエッジの一部にはマイクロカーボンが入っていますが、これはマルチ・ヨーヨーでのセイルのたわみを少なくするためです。
MadC-240-04●リーチラインは自動調整式ではなく、マニアらしくマニュアルで行えるようにしています。トレーリングエッジを通過するリーチラインとリーディングテープを引っ張るリーチライン、それぞれが翼端で任意の張りに調整可能になっています。初期の設定で不満がなければ、緩むまでそのままの使用で問題ありません。
調整の必要を感じたときは翼端のカバーのクチがベルクロで閉じてありますから、そこを開いて行います。

MadC-240-17●ブライドルラインは、Madの曳きからは90kgは必要ないので、70kgのラインで、太さの細いブライドルラインを使用し、ブライドル同士の干渉を最小限にしています。ブライドル形式はスリーポイントですが、3センチのダイナミック・ターボも選択可能な作りです。また、レッグの端はエクステンションを装着した際でも、コブが残らないような方法にしてあります。もちろん、エクステンション無しでも、通常のラークヘッドノットで使えます。

●ゴム製のコネクター類はパーツ・メーカーの既製品のため、使えるサイズに限りがあり、通常、ピッタリのサイズが選べないのがスポーツカイト業界の内情ですが、Madではスベテのコネクターはロッドの外径に一致するように加工してから装着しています。よって、テーラーメイドの感覚になっており、ピッタリのサイズです。

●スポーツカイトを構成するすべてのパーツは日本製、アメリカ製、ドイツ製、フランス製、スペイン製、の中から、最も高品質なもののみで構成されています。中国メーカーのものは1点も使用していません。


< その他 >

MadC-240-07●Madはトップスプレッダーにさえラップドカーボンを配置しています。トップスプレッダーには軽量なSkyshark2Pを使っています。カイトの前半分の重量は、いくらか重い方がいい場合と、軽くなければならない場合とがあり、それはカイトの設計段階で決まります。Madの場合は、後者のバランスで設計しています。トップスプレッダーには軽量なロッドをチョイスしました。トップスは何でもいい訳ではありません。

MadC-240-16●スポーツカイトを飛ばしたあとで、カイトをたたむときに、トップスプレッダーフィールドに置き忘れたりしやすいことを考慮して、トップスプレッダーの仕舞い場所を作りました。セイルとトップスの交差点に付いている「擦れ止め布」の後ろに縦に差し込んで仕舞います。ここ差し込む習慣を持てば、無くすことはありません。
また、この擦れ止めは2重なので長期の使用でも擦り切れないでしょう。

MadC-240-09●以前のスポーツカイトは、セイルからエッジコネクターがむき出しでした。最近のスポーツカイトは、トリック・カイトでもあるので、エッジコネクターにラインが絡まないように、コネクターがカバーされる作りになっています。
Madではこのカバーを、一般他社のスポーツカイトよりも更に深くし、コネクターを埋没させ、激しいブライドルの動きが有ってもコネクターの根元に接触しないように配慮しています。また、長期的には、この部分は磨耗しやすいので、ダクロン布で内側を二重にし、ガッチリと補強しています。

MadC-240-11●セイルも含めたフレームの重量配分を理想的な値にしています。よって、スパインのテイル端に大きなバラストを搭載する必要はありません。
だだし、計算上、少しだけ不足するようにしております。それは手作りに限らず、スポーツカイトは個々にいくらかの個体差があるため、それを調整する場所が必要と考えるからです。スパインのテイル端のベルクロをめくったところに、標準で2gのバラストを搭載しています。この僅か2gのバラストは調整のためのバラストです。予備に2g付いていますが、通常は2g搭載のままで正常値です。場合によってはゼロでもいいです。どうしても少ないと思うときと、風が上がっているときは予備の2gも加え、計4gでお使いください。それ以上は要りません。


< 仕様 >

SIZE 高さ 86cm スパン 216cm リーディングエッジ長 137cm
セイル Icarex PC31(逆輸入品)
フレームを構成するロッド Skyshark2P , P100 , P200 , P300 , AeroStaff-Light , AeroStaff-Gold


< 推奨 >

風速 4m~4.5m以上 Spreader:AeroStaff-Gold
風速 4m以下 Spreader:AeroStaff-Light(スタビライザー併用)


< カラー >

MadCobra-Ye140MadCobra-Re140MadCobra-Mo140MadCobra-Bl140
専用ナイロン布製バッグ *入り口はベルクロ開閉
Mad-kitecase
*中は2つに分けて入れられます。

(Text:エスク 中野)